市立角館総合病院

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脳神経外科

血管内脳神経外科

血管内脳神経外科の紹介~[脳血管内治療について]

 当院では、平成14年から脳血管内治療の先駆的な先生方(日本脳神経血管内治療学会指導医)との提携・ご協力により脳血管内治療を行なってきました。これらの先生方のご指導、ご協力の結果、当院脳神経外科医師が同学会専門医を取得しております。全世界・全国的には脳血管内治療はスタンダードになってきておりますが、秋田県内に脳血管内治療専門医はごく少数しかおらず、治療出来る施設が限られているのが現状です。当院では、今までよりも更に活発に脳血管内治療を行い、患者さんの治療に貢献したいと考えております。

[脳血管内治療とは?]

最大の特徴!!― 大きなメリット

  • 血管の中から治療するので、従来の開頭術のように頭を開ける必要がない。
  • 太ももの付け根の動脈を刺すだけなので、原則その部位の局所麻酔のみで治療可能。
  • そのため、体への侵襲(負担)が少ない。
  • 合併症(重い心臓病や肺疾患、糖尿病など)の有る人や高齢の方にやさしい治療。
  • 手術のみでは治療困難であった病気(特に急性期脳梗塞)を根治出来る可能性がある。

(欠点)

  • レントゲン透視下の治療のため、被曝の問題がある。
  • 造影剤によるアレルギーの可能性がある。
  • (出血等の)合併症を起こした際に対応しにくい。

[対象疾患]

  • 脳動脈瘤(破裂・未破裂)
  • 急性動脈閉塞(急性期脳梗塞)
  • 脳・頚動脈狭窄
  • 脳血管奇形
  • その他(ここでは、頻度の多い疾患である脳動脈瘤、急性期脳梗塞、頚動脈狭窄の血管内治療についてお示し致します)

脳動脈瘤

 脳血管に出来るこぶ、こぶが破れるとクモ膜下出血になります。破れた場合早期のこぶの止血が必要になります。脳動脈瘤の治療は2つ有ります。①開頭クリッピング術、②コイル塞栓術です。これは未破裂脳動脈瘤の場合にも同じ治療になります。
①開頭クリッピング術:従来行われてきた治療で、確立された方法です。全身麻酔下に開頭し、顕微鏡下に直接こぶを確認。こぶの根本に金属製のクリップをかけ止血する治療です。
②コイル塞栓術:局所麻酔、もしくは全身麻酔下に太ももの付け根の部分よりカテーテルを挿入し、レントゲン透視下に極細いカテーテルをこぶの中に入れます。そのカテーテル経由に金属(プラチナ)製コイルを密に詰める治療です。

① 開頭クリッピング術

開頭クリッピング術

② コイル塞栓術

コイル塞栓術

どちらの治療を選択するかは、脳動脈瘤の位置や形状などを総合して判断します。ISAT研究という海外での大規模研究では、クリッピング、コイルどちらも可能な脳動脈瘤の場合、コイル塞栓術を行なった群の方が、治療成績が良好でした。こういった研究結果なども参考にして治療選択をします。

急性脳動脈閉塞(脳梗塞)

 脳梗塞とは、脳の動脈が詰まって血流が途絶え、脳細胞が死んでしまう状態です。脳細胞は血流が途絶えると、数分から数時間で回復不可能な状態に陥ってしまいます。これを防ぐ手段は、いかに早く血流を再開させるかに尽きます。現状では発症4.5時間以内であれば、t-PAという薬 を点滴で投与することが基本の治療です。しかし、何らかの理由でt-PAを使えない場合が多いこと、また、最近、太い脳動脈に詰まった大きな血栓では、t-PAがあまり効かないことがわかってきており、このような場合には血管内治療が大きな役割を果たします。
①血栓溶解療法:以前から行なわれていた方法で、細いカテーテルを直接血栓まで持って行き、そこで血栓を溶かす薬を注入する方法です。この治療のメリットは、全身投与(静脈点滴・注射)と異なり、血栓の近傍で薬を入れるために、少量でなおかつ効果的な薬効が期待できます。
②血管形成(拡張)療法:動脈硬化性病変が主体の動脈閉塞・狭窄に対し、風船を使って血管を拡げる治療です。
③血栓回収療法:ここ1~2年で認可された新しい治療法で、ステント(金属メッシュで出来た筒のような道具)で血栓を絡め取るものです。この道具は、現時点で、秋田県内で使える病院はほとんど有りません。
 この分野は進歩が著しく、更に新しい道具が使えるようになると思われます。これらの道具を使用できるのは、血管内治療専門医かこれに準じた経験を持つ医師に限られています。そのため、秋田県内で緊急時にこれらの治療が出来る病院は限られています。

ステント術前後

脳・頚動脈狭窄

 脳・頚動脈狭窄については、主に治療の対象になるのは頚動脈狭窄の方です。脳動脈狭窄に対する治療は、現時点では特殊な場合においてのみ行なわれています。そのため、ここでは頚動脈狭窄について述べる事とします。頚動脈はその名の通り、頚(首)にある大きな動脈です。顎の下辺りで、内頚動脈と外頚動脈とに分かれます。 内頚動脈は脳に、外頚動脈は顔や頭の皮膚や骨等に分布します。そのため、内頚動脈の血流が悪くなると、脳の虚血(血が足りなくなる事)症状が出ま。一過性で済む場合と、脳梗塞になってしまう場合が有ります。多くは、内頚と外頚が分かれる部分にプラーク(コレステロールの塊みたいなもの)が溜まり、動脈内腔が狭くなったり、閉塞してしまったりします。 症状がある場合、無症状でも今後脳梗塞を起こす危険性があると考えられる場合、狭窄した頚動脈を広くする治療が必要になります。従来からの外科的治療としては、頚動脈内膜剥離術(CEA)というものがあります。これは、全身麻酔下に頚部の皮膚を切開し、直接頚動脈を露出し、頚動脈を一時的に切開し厚くなった頚動脈内膜を剥離するものです。血管内治療では、下図のような金属製のメッシュで出来た筒(=ステント)を狭窄部に留置する事で、狭窄した頚動脈を拡げます。

Merciリトリーバー