診療科のご紹介
消化器外科が診療の中心になります。
食道から肛門までつづく管(消化管)と、これに付属する肝臓・膵臓・胆嚢などの病気の治療が主なものです。
消化器内科と協力して外科治療・内科治療の垣根をとりはらった治療を行います。たとえば胃癌を例にとると、以前は手術していたものでも、ある条件を満たせば手術せずに消化器内科で内視鏡を使って切り取って治せるようになりました。内科で治療するのか、あるいは外科なのか。治療手段や考え方の進歩はとどまることがありませんので、その境界線は時代とともに変化します。
「地方だから」「田舎だから」という認識は我々にはありません。都会の総合病院外科と同レベル以上の治療を提供するよう努力しております。
治療方針
標準的な治療という考え方を大切にしています。
施設や主治医の好みで治療方法を選ぶのではなく、手術方法にしても薬を使った治療にしても、「日本で現在主流の方法」あるいは「世界標準の治療法」は何なのかを、常に意識しています。日々進歩する治療法を安心して提供できるように、我々外科医は常に学び、努力しています。たとえば抗がん剤は、最近になって新しいメカニズムの良い薬が出てきましたので、治療戦略が大きく変わりつつあります。このような進歩をいちはやく診療メニューに取り込んで「標準的治療を安心して受けてもらうこと」が我々の使命であると考えています。
治療方針は患者さんとそのご家族と相談の上で決めています。標準的な治療法が必ずしも患者さんの価値観と一致しない場合があります。ですから外科に入院されても、手術以外の治療法を選択することは少なくありません。各々の治療方法の特徴を十分に納得・理解してもらった上で、患者さん自身に決めて頂いています。
良い医学医療にはナース・薬剤師・栄養士・事務スタッフ等とのチームワークが欠かせません。当科では週1回、ドクターとナースが集まってカンファレンスを行っています。治療方針やケアなどの患者さんに関するすべてが話し合われます。患者さんのためになる良いアイデアはどんどん取り入れ、スタッフが一丸となって向上心をもって診療に取り組んでいます。
重症患者さんの多くは外科で治療します。交通事故などで当院へ救急搬送された患者さんでは、外科で治療して生命に差し迫った危機を脱した後に他診療科へ移るというケースが少なくありません。ナースを含めた外科スタッフの、普段の術後管理と合併症治療の経験と能力が大きく生かされる場面です。
※ 具体的な治療方針は患者さんによって異なります。
手術全般について
外科手術では止血に糸を使います。
その多くは絹糸です。それらの糸は後でお腹を開けて取り出しませんので、一生涯消えることなく「異物」として体のなかにとどまり続けることになります。そして時にそれらが病気の原因になることがあります。
当科では、それをなるべく避けるために電気的に止血と切開が自動的に行う「リガ・シュアー*」という手術器械や、切り進めながら同時に細い血管を止血する「パワー・スター*」というハサミ、あるいは高周波振動で止血と切開を行う「ハーモニック・スカルペル*(超音波凝固切開装置)」などを場面に応じて積極的に使用しています。
これにより、使用する糸は非常に減りましたし、同時に手術時間は短く、出血量も少なくなりました。そして可能な限り「溶ける糸」を使うよう心掛けています。また、手術後に腸と創が癒着してイレウス(腸閉塞)が起こることがあります。当科では汚染手術を除く開腹手術全例で「セプラ・フィルム*」という癒着防止シートを使用しています。その結果、癒着性イレウスの発生はほとんどなくなりました。従来の方法にとらわれることなく、一歩でも「からだにやさしい手術」に近づけるように、手術方法の工夫と同時に、新しい手術器械と材料の検討を常に怠りません。
秋田県の中で特に仙北地方は高齢の方が多く、手術を受ける患者さんも糖尿病や高血圧症など多くの合併症をもった方々が少なくありません。それらは術後合併症の発生率を高くします。いわゆる一流病院のなかには、そのような合併症を持った患者さんや高齢の方の治療を断るところが少なからず存在します。「手術治療成績が悪くなる」からです。
しかし、合併症の存在や年齢が患者さんの「外科治療を受ける権利」を奪ってよいものでしょうか?
当科では他診療科の協力の下に、そのようなケースでも患者さんやご家族とよく相談して細心の注意のもとに積極的に治療を行います。たとえば術後呼吸不全の治療に欠かせないサーボ・ベンチレーターは、新機種が2台導入され、術後腎不全は泌尿器科の全面的協力を得て透析治療を行っています。
合併症を起こさない努力はもちろん大切ですが、合併症が発生した場合の治療手段を多く持つことも良い外科治療には欠かせません。
医師からのワンポイントアドバイス
怪我の処置について
(例)怪我の処置と言えばこれまでは「消毒+ガーゼ」でした。消毒は痛いし、翌日にガーゼを剥がすのはもっと痛いですよね。新しい治療法は、傷は早く綺麗に治り、しかも痛くない治療法です。
傷口の消毒はしません。水道水(!)で洗い流すだけで十分です。ガーゼは使いません。 傷口は乾燥させてはいけません(傷を乾燥させるスプレーは絶対に使わないで下さい!)。
傷口の細菌をゼロにする必要はありません。水道水で洗い流して細菌数を減らせば良いのです。
化膿は消毒とは別のメカニズムで起こります。傷口から出る浸出液には傷を治すはたらきがありますから、傷にガーゼを使わずに湿った状態にしておいた方が治りは早いのです。そもそも傷を治す主役は「細胞」ですから、細胞がはたらきやすい湿った状態にするのは良いことです。傷の状態によってフィルムやハイドロコロイド材などを使います。
やけどは軟膏やガーゼを使わず、食品用ラップで覆って治します。手術後の患者さんの傷口も消毒をしていませんが、感染が多くなったということはありません。
地域の先生方へ
外科疾患に関連した事は何でもご相談ください。困難な疾患に直面することを、 新しい治療法開拓へのエネルギーにしたいと考えています。